会報誌「園芸世界」のご案内

「園芸世界」12月号


CONTENTS

  • 切手盆栽誌 羽賀正雄 ・・・・・・・・・・・・・・・ 3
  • 園芸史雑話⑬ 橋本梧郎 椎野昌宏 ・・・・・ 4
  • ぐるり世界の園芸 森和男 ・・・・・・・・・・・・ 6
  • 対決! 園芸文化人 平野恵 ・・・・・・・・・・・ 9
  • 一歩先へのヒント 田淵誠也 ・・・・・・・・ 10
  • 花・ひと・模様 高田薫 ・・・・・・・・・・・・ 12
  • 花野彷徨 にしひがし 田代道彌 ・・・・・・ 14
  • 植物導入記 小森谷慧 ・・・・・・・・・・・・・・ 16
  • 本の花園 柳沢正臣 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
  • ベストセレクション ・・・・・・・・・・・・・・・・ 40

■特集:園芸史雑話⑬ —「人」を軸として—/椎野昌宏
橋本梧郎 ブラジルを起点とし、南米僻地の植物のフィールドワークを行い、有益な著書を遺す

 橋本梧郎はブラジルに移民し、若いころから懸命にその地の風俗や民俗について調査記録しました。そして公職引退後の60才を過ぎてから植物をメインテーマとして掲げ、95才の超高齢に達するまで、現地植物のフィールドワークを行いました。
 ブラジルに到着後、橋本はサンパウロのエメボイ農業学校を卒業し、日本語学校校長、自然科学研究所部長、日本館庭園部長、農事試験場長、博物館長などの公職を歴任しました。彼の植物調査研究の集大成は公職から離れた晩年になされますが、ブラジルの自然が極めて豊富であり、研究者にとっては無限の宝庫であることを実証しました。橋本が現地事情から居住していた住居と倉庫を手放し、引っ越しせざるをえなくなった1992年頃に,坂嵜信之らが中心となって新しい住居兼標本館を建設するための募金活動を始めました。そして日本から150名余りの方から2万ドル余りが寄せられました。その結果1997年1月に完成し、橋本標本館として公開され、橋本がそれまでに日本の研究者たちに与えた恩義と貢献に報いる感謝のしるしとして残されました。


■ぐるり世界の園芸
日本山草史(36)/森和男

 日本でヒマラヤの青いケシがメジャーになったのは故・中尾佐助さんが毎日新聞社から『秘境ブータン』が刊行されてからのことだろう。中尾さんがヒマラヤの植物に触れたのは昭和27年のマナスル踏査隊の頃からである。
 中尾さんが『ヒマラヤの花』に載せた青いケシの中で高所に行けばたいてい見ることができるのがホリドゥラであり当然のように中尾さんの本にメコノプシス・ホリドゥラは登場する。かつてホリドゥラはヒマラヤ西部からネパール、ブータン、中国の横断山脈から青海省という広範囲に分布するとされていた。だから多くの登山隊がホリドゥラの写真を撮影して帰るのでホリドゥラは青いケシの代表のようになった。広範囲な分布域、各所に見られるホリドゥラはそれぞれに異なる姿形をしていて古くから植物学者を悩ませてきたようだ。中尾さんも指摘しているように一茎一花のものや多花のものは誰が見ても視覚的に異なっていて同じものとは思えない。


■花ひと模様(68)
どうされましたか?/高田薫

 スーパーなどでは、どの季節にもたくさんの野菜が売られていて、料理をするのにはとても便利ですね。そうは言っても旬の食材が美味しいのは言うまでもありません。
「野菜の世界も進化しているなあ」と思っていると、ビックリな物を見つけて思わず私が店長に「これ見て!」と言ってしまいました。『こんなものが収穫できますよ』という見本に反応してしまったのです。『虹色コーン』と名づけられた「とうもろこし」は、様々な色がちりばめられた宝石のようです。本当に虹色に見えましたが、店長は「どんな色が出てくるかは、実がなってみないと分からないようです。部屋に置いて飾る方が多いようですが、ポップコーンにも合いますよ」と教えて下さいました。
 驚きの連続だった野菜の苗売り場。「どうされましたか?」と聞きたいくらいバリエーションが広がっています。様々な品種が毎シーズン出てくる草花に負けていませんね。


■花野彷徨にしひがし(135)
八戸市種差海岸の晩秋の花/田代道彌

 本州最北端の下北半島の植物を思い浮かべると、その種名や分布の姿などから、魅力的なものが少なくない。下北半島の基部の位置に、かもめの1種ウミネコの繁殖地として国の天然記念物に指定されている『蕪島』がある。そこから南へ岩壁が続くが途中には漁港や展望台や砂浜などが交互に出てきて、およそ延長8kmの範囲が『種差海岸』と呼ばれ、最近では三陸復興国立公園として、青森県や地元八戸市が整備に力を入れるようになった。
 さてその種差海岸だが、この地の植物分布を見るとことさらキク科がおもしろい。夏の花だがミチノクヤマタバコがある。ハマギクも極めて多いが、しかしここはハマギクの分布の北限に位置し、逆に分布の南限は茨城県の高萩海岸などで、このように狭い範囲に遺存する日本の特産種である。学名もニッポナンテマム・ニッポニクムだから、ちょうどトキ(朱鷺)の学名が、ニッポニア・ニッポンであるのに似ている。また最近ここ下北の太平洋岸からはムツトウヒレンやハチノヘトウヒレンなど、キク科のトウヒレン属が発見されそして2種とも新しく独立種として記載されている。これまであまり注意されてこなかった地域だけに、植物地理学的にも、この地方には夢があるように、私には思われる。